新藤監督は93歳になったはずだが、相変わらず話は明晰である。ただ、いつものような、会の趣旨に強引でも話をつなげてうまくまとめるところまで至らず、映画製作時の貧乏話だけで終わってしまった。後から聞くところでは、最近体調を崩しているとか。
『第五福竜丸』は、1959年公開の作品。主演が宇野重吉なのだが、風貌がまるで寺尾聰なのだった。老人役のイメージが強すぎて、宇野重吉と寺尾聰がなかなか頭の中でつながらなかったのだが、ようやく腑に落ちた次第。
無知ゆえの無邪気さが、一転して無知ゆえのヒステリーに変わるという喜劇は、いまも繰り返される人の性だろう。当時の「核アレルギー」の雰囲気の中で、その辺の人間臭いところを押さえた脚本を書いてしまうところが、新藤監督の真骨頂だ。低予算で作ったという割には、なかなか見応えのある作品であった。
